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未来教室第4回 「地域の暮らしと医療」 ~医療法人サンズ あさのクリニック医師 浅野 直さん~2021.10.15 Update

未来教室第4回 「地域の暮らしと医療」 ~医療法人サンズ あさのクリニック医師 浅野 直さん~

ゲストスピーカー

~医療法人サンズ あさのクリニック医師 浅野 直さん~

活動内容

今期第4回目の未来教室。未来ゲストは、まちのお医者さんとして、在宅医療、高齢者医療に取り組み、地域の人が集える場の創出もされている浅野 直さん。
”生と死、生きる意味、学ぶ意味とは?”
浅野さんからの中学生への真っ直ぐな投げかけ。その投げかけを受けて自分自身と対話し、言葉にする中学生たち。
コロナで少し期間が空いての開催ではありましたが、それぞれに深まる時間でした。
全ての子どもたちに必要な、物事を自分に関係つけて深く考える対話の時間。これを濃い出会いとしっかりとした時間をかけてサポートするのがアスエコで行っている未来教室の取り組みですが、第4回目となりそれが少しづつ深まってきています。

学校のことや家庭のこと、家族のこと、自分のこと。
まわりにいる人には見せていない悩みごともあるかもしれません。
けれども、自分がその行動をとっているのはなぜなのか。
それを、自分に対して問いかけることが必要です。

あなたはなぜ、生き、学びますか? そんなことをみんなで考えた第4回の詳細を是非ご覧ください。

内容

2021年10月15日(金)に、第4回アスエコ未来教室が開催されました。
第4回となる今回の未来講師は、あさのクリニック 浅野直さん。

活動の内容

今回の未来教室のプログラムは以下の通りでした。

1.オープニング
2.目標説明
3.ゲストトーク(浅野さん)
4.質問セッション
5.クローズセッション

オープニングでは、前回同様、名前リレーによるアイスブレイクを行ないました。
中学生、大学生、アスエコスタッフに加え、未来講師である浅野さんを交えてのアイスブレイクです。

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3か月ぶりの開催となったため、中学生には少し緊張の色が見られたのですが、名前リレーをすることでだんだんと表情が柔らかくなるのを感じました。

目標説明では、未来教室でのキーワードや目標の確認をします。
まずは「未来教室の五か条」を思い出し、その次に今回の目標を確認。
第4回の目標は以下の3つでした。

・社会の問題を自分に引き寄せる(自分にも関係することを知る)
・背伸びを拡大してみる
・グループで協力して質問し、深めてみる 真剣に楽しく!

第3回に引き続き、「真剣に楽しく」という目標が立てられています。
どんなことを口にしても大丈夫だから、少し背伸びをして、恐れることなく自分の意見を言語化してみよう。
その目標のために、まずは「今より一歩進むために、『いま、自分に必要だと思うこと』」、「未来教室で頑張りたいこと」を改めて考えて、スケッチブックに書きました。
この2つのテーマは、第1回未来教室の最初にも考えましたが、半年前の背伸びと今の背伸びはきっと違います。
自分に必要なことを深く考え、自分なりに言葉にしていく中学生の姿が、半年前よりも頼もしく見えた気がしました。

ゲストトーク

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今回の未来講師は、医療法人サンズ あさのクリニックの医師である浅野直さんです。

浅野さんは、総社市で診療所を経営しています。
診療所を開業する前は救急医として働いており、現在は診療所で患者さんを診るかたわら、訪問診療などの在宅医療も行なっているそうです。

ゲストトークの導入のスライドには、以下のような言葉が書いてありました。

30年ほど前、私も皆さんと同じ中学生でした。
30年ほど後、皆さんは、一体どこにいて、何してるでしょうか?
今日の不思議なめぐり合わせにちょっとワクワクしながら。

もしかすると出会うことはなかったかもしれない中学生と浅野さんが同じ空間にいることには、たしかにワクワクせずにはいられません。

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浅野さんは、自らの仕事のことを「地域の人々の幸せな暮らしを支える装置」と表現しました。
在宅医療で関わる患者さんは、高齢者がほとんどです。
病院にかかっている多くの高齢者は虚弱で、入院生活で環境が変わって亡くなってしまうこともあり、病気で残された時間は残っているよりも長くない、と浅野さんは話します。

浅野さんが「人の死」を明確に意識するようになったのは、父親が亡くなった時だったそうです。
救急医だった浅野さんは毎日の業務として急病、大けが、そして人の死を多く扱っていました。
救急医になって3年目。自分の父親が亡くなったということを、仕事で扱う死と同じように流れるように受け止めようとした浅野さん。
しかし、父の死を流れるように受け止めることができないということに気づきます。
業務として扱っていた死と、自分の父親の死は、同じ「死」であるはずなのに、その質が違っていたのです。
その出来事をきっかけに、浅野さんは「人はなぜ生きている?なぜ人は死ぬ?」と考えるようになりました。

その考えから、浅野さんは、地域の人々の幸せな暮らしを自分の仕事で支えることができるようになれればいいな、と思ったそうです。
未来教室では、実際に関わった患者さんのエピソードを紹介しながら、その中で考えたことを2つ、話してくれました。

・大事なことを大事だと思って取り組む
・生きるために帰る

後者の「生きるために帰る」という言葉が、筆者の印象に深く残っています。
在宅医療よりも、病院の施設の中で治療をする方が長く命を繋げることは確かです。
しかし、それは患者さんにとって生きていると言えるのでしょうか。
自分の好きなことをしたり、自分の好きな人と一緒にいたりする時間こそ、自分が生きていると実感できる瞬間なのかもしれません。
患者さんにとって、病院での治療から在宅医療に切り替えることとは、死ぬために帰るのではなく、生きるために帰ることなのです。
ただ長く命を繋ぐだけが生きているということではない、と浅野さんの話を聞いて強く感じました。

浅野さんが取り組んでいるのは、地域の暮らしを支える地域医療です。
地域医療に必要なものはあまりにも多様で、何をやるかについてあらかじめすべて準備することはできません。
そこで必要になるのは、「なぜやるのか?」という問いだ、と浅野さん。
なぜ自分は地域の医療をやっているのか。なぜ中学生は未来教室に参加し、学んでいるのか。
学校のことや家庭のこと、家族のこと、自分のこと。
まわりにいる人には見せていない悩みごともあるかもしれません。
けれども、自分がその行動をとっているのはなぜなのか。
それを、自分に対して問いかけることが必要なのです。

あなたはなぜ、生き、学びますか?

言葉にして、度々振り返ろう、と浅野さんから会場にいる中学生、アスエコスタッフ、大学生スタッフに呼びかけられました。

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浅野さんは、地域の暮らしと医療に取り組んでいると、生と死はつながっていると感じる、と話します。
半年前には歩いて病院まで来ていた患者さんが、病院に来られなくなり、亡くなってしまう。
そうして話すことも姿を見ることもできなくなった患者さんと、過去に話したことを鮮明に覚えていると浅野さんは言います。

このとききっと、会場の中にいた誰もが、そのような人の記憶を思い出していたのではないでしょうか。

私たちには、自分を起点にして同じ時代を生きる横のつながりと、先祖や子孫との縦のつながりが存在します。
そして今、目の前に「ものごと」や「人」の課題があるとしたら、自分にできることとできないことをきちんと理解し、課題に向き合うことが、わたしたちには必要です。

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浅野さんはまとめとして、中学生に伝えたかったことを話してくれました。

自分の中にある中心的な価値観や、自分と関わるもの、こと、人を大切にするべき、ということ。
自分との対話、自分の内面への旅を忘れないようにすること。
また、それをアウトプットすること。
自分のできることをこつこつと、大切にすることが、私たちが今この瞬間から取り組むことができるSDGsだと思う。

世界は繋がっている。できることからコツコツと。

SDGsと聞くと、地球規模、国家規模の環境や社会の問題について考える人は少なくないと思います。
しかし、SDGsはそのようなハードルの高いものではありません。
自分にできることから取り組むことも、SDGsなのです
浅野さんは、そのことを、地域の暮らしと医療の観点から話してくれました。

質問セッション

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質問セッションでは、まず、浅野さんから中学生に向けて投げかけられた「なぜ生き、学ぶのか」という問いについて、中学生が考えました。
以下は、中学生が考えた「なぜ生き、学ぶのか」に対する答えです。

・与えられて生きている。
・どうせ産まれたならできるだけ生きてみる。死ぬのはいつでもできる。
・生きることは学ぶこと。
・生き続けるために学んでいる。学び続けていると、生きている。
・自分のしたいことをするため。
・わからないことを知るために生き、それを実行するために学ぶ。

この問いに、正解、不正解はありません。
自分が思う中で考えること、書くことが最適解です。

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次に、浅野さんに質問したいことをグループで考え、共有しました。
以下は、質問とそれに対する浅野さんの答えの一部です。

Q.「生きるために帰る」のでは緊急の治療などができないので、やはり家に帰らない方がいいのではないか?
A.お医者さんの「生きる」と、患者さんの「生きる」は意味が違っている。機会をつけて長く生きるのも、自分の生きている時間を短くしてでも、密度濃い生き方をするのも、患者さんが選択すること。自分の意思を尊重しながら「人生の最終段階」を選択することが大事であり、そこに正解や不正解はない。

Q.余命宣告をした患者さんに対する接し方は今までと変わる?
A.何も変わらない。残された時間よりも、今この瞬間を大事にしている

Q.訪問診療、在宅医療で誇れるところは?
A.患者さんの長い人生の最期を自分の診療所に信頼して預けてくれることは嬉しいしありがたい。患者さんに残された、密度の濃い、大切な時間に関わらせてもらうことへの喜びは大きい。自分の仲間たちが目指す医療、サービス(人々の幸せを支える装置)を提供できたこと、その話を患者さんやご家族から聞いた時は誇らしく思う。

ここでは紹介しきれませんが、ほかにも、興味深いお話がたくさんありました。

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また、質問セッションの時間だけでは話しきれず、個別に浅野さんのもとへ話を聞きに行く中学生がいたことも、印象的でした。

中学生の感想

以下の写真は、第4回未来教室を受講した中学生の感想の一部です。

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最後に

第4回となった今回の未来教室では、過去3回の講座とは少し違った、人の生と死に関わる話を取り扱いました。
人の死に関する話題は繊細であり、そう簡単には踏み込めない領域かもしれません。
しかし、浅野さんが「生と死はつながっている」と話していたように、人の死に関する話を聞くことで、生きることについて改めて考えることができます。

中学生だけでなく、スタッフも多くのことを学ぶ未来教室となりました。

第2期未来教室も、残り2回。
第5回未来教室は、11月5日(金)に開催される予定です。
中学生がどのように変化し、成長していくのか、これからも目が離せません。